小笠原諸島は長編映画のような旅のデザイン

旅には感動や刺激があって、
またそれで次の旅に出たい連鎖が続くと思っている。
そしてそれを提供する旅行会社の立場だったら
いかにお客さんの心に残るツアーにするかを考える。

 

僕の中で旅の醍醐味は自分で行程を考える事も含めると思っているが、
小笠原諸島はそれがあらかじめしっかりデザインされている場所だと感じた。
旅をする上では必ず制約がある。お金や時間や行動範囲や…
小笠原諸島はそんな制約が大きい。
大きいゆえに想定された感動に導かれやすい場所なんだと思った。

 

小笠原諸島は旅全体が1本の映画の様になっている

小笠原諸島は東京から南に1000km進んだところで
緯度が沖縄とほぼ同じでありながら東京都内であり、品川ナンバーの車が走る島。
本土とは切り離された場所にある為独自の生態系を持っており
2011年6月に世界遺産に登録されている。

僕は2017年の5月に一週間かけて小笠原諸島の父島に行ってきた。
そもそも小笠原諸島へは週に1本の船しか往復しておらず
ほとんどの旅行客が同じ船で行き、同じ船で帰る事になる。

島は独自の自然や町は当然素晴らしいが、
行ってみて思った小笠原諸島に旅する事自体が
他には無い付加価値が多いように感じた。

それが全体通して1本の映画を見たような高揚感を与えてもらえる
行って素晴らしいと思った事を旅程の流れ通り書いてみます。

 

おがさわら丸がデカい

まず小笠原諸島まで連れて行ってくれるおがさわら丸。
とにかくデカい。そしてきれい。
1000kmもの距離を週1の往復しかしていないので
島に運ぶ物資などは全てこの船で運ぶ。
唯一のインフラでありライフラインだ。

竹芝港から出る船であるおがさわら丸は約24時間かけて小笠原諸島へ向かう。
今は3代目で2016年に出来たばかりだ。

内装はすごくオシャレで広い。

食堂もすごくきれいだ。

船内は宿泊客が多すぎるからか浴場はなくて簡易シャワー。

中央の階段。デッキ数はなんと8層もある。

 

 

船内の電光掲示板の言葉がグっとくる

往路の船内でとくに印象深かったのは階段のところにある電光掲示板だ。
小笠原諸島を簡単に印象付けられる。

これは小笠原諸島の挨拶だ。
復路でもこの言葉は再びすごくグっとくる。

 

そういや東京から出てないんだなと思い出す。

視覚的にわかるデザインと何が言いたいかの簡易な文章。
さらにその下に小さくどういう意味かの説明。
与えたい印象や情報の優先度がしっかりしていて
わかりやすくて良いデザインだ。

何か最高じゃないですか?
他にもいくつかある。これはぜひおがさわら丸船内の電光掲示板で見てもらいたい。

 

 

島について最初に迎えてくれたのはピーポくんだった。
そうだ、ここは東京だった…。

島は一週間貸し切りのサークルの合宿場になる

船は一週間に一便のみ。
って事は島の人々は一週間同じ島に寝泊まりするサークルメンバーの様なもの。

居酒屋で出会った1人旅同士。
偶然にもみんな音楽に関わる活動をしていた。

島では様々な現地ツアーが行われていて居酒屋もたくさん。
出会いはそこらへんにたくさん転がっている。

ガイドツアー、居酒屋、宿。いろんなところで出会った人と話せば
お互いの感動や情報を共有しあってどんどん知り合いが増えていく。

 

大自然はもちろんすごい

人と動物の距離が近いのが最高の魅力だ。

イルカ!イルカやクジラの出没情報は島内のツアー船でリアルタイムで共有しているから出没エリアの情報を受信したらすぐに向かってくれた。

南島ではサメが遊んでいた!

南島にて。この石みたいなもの全部昔絶滅した貝の残骸。
南島は個人での入島禁止や入島時間の制限など条件がとても厳しい

どこを見てもきれいな海。東洋のガラパゴスと言われるだけあって
この大自然が何より島を魅了するものである事は間違いない。

あと、けっこうどこだってWi-Fiが繋がったのはよかった。
(奄美大島の方が全然圏外が多かったな。)
島民も常にオンラインな時代なのだ。

最後のセレモニーが何より圧巻

この島のサイズ感で島内5日間という時間は絶妙で、
島に慣れつつはあるがまだまだ遊び足りない。
そのタイミングで帰る事になる。

そんな中で最後に見せてくれる見送りこそが
小笠原諸島を象徴する行事だ。

島の見送りは島民の伝統行事みたいで全員がすごい本気。

みんな見送る人は「いってらっしゃい!」と言う。
またいつでも帰っておいでを意味する。

これはまた来るよ!と思わず言いたくなる。
そして船が離れてからが小笠原の本気。

いろんな船が次々と着いてくる!多分ここが旅一番のハイライト。

横並びにたくさんの船が走り、そこから乗客や島民が見送りのダイブを見せてくれる。 船の数は数隻どころじゃなくて本当に何十もの船が並走する。
この光景は圧巻だった。

素敵なお土産をもらった気分で「ありがとう」と伝えたくなるような時間だった。

 

終わりよければすべて善し。最後は船内大宴会

島民に見送られてほっこり幸せな気持ちになった船の中。
ここから東京に向かう間、船の中では大宴会が始まる。

往路では予想もしなかった状態だ。
場所を構わずいろんなところで自由に飲んで騒いでいる。

いっしょに旅行に来た人々で旅の最後の余韻に浸ったり、
島内で出会った人々で旅を振り返りながら帰る。
必然的にも長い時間島で過ごしてつくった思い出と、
それをゆっくり振り返る時間が用意されている。
これこそ小笠原の旅のデザインだ。

 

現地ツアーで仲良くなった2人と夜遅くまで飲んだ。

 

結論、制約のある旅だからこそ生まれる高揚感があった

小笠原諸島は制約が多い。長期休暇は必須だ。交通手段も船だけだ。
だからこそ生まれる付加価値と、それにより高まる人々の
高揚感のグルーブ。復路の船内の光景が何よりの象徴となっているなと感じた。
とても密度の濃い時間だった。

 

旅の楽しみ方は人それぞれだ。
大勢でワイワイしたい人もいれば1人でいたい人もいる。
みんな同じなのは旅先だからこそ味わえる体感を求めている。

この24時間の往復の船旅でパッケージングされた
島民や自然がもたらしてくれる感動は
間違いなく他では味わえない長編映画だった。
簡単に行ける場所ではないが島でやり残した事はたくさんある。
ふと、また映画の続きが見たいなと思ったら旅程を立てるんだろうなと思った。

 

ちなみに今回は小笠原諸島の旅のデザインに
フォーカスをあててみたが
去年に南島や自然の事も書いているので
興味あればこちらも見てみてほしいです↓↓

小笠原諸島(南島)【東京都】 Ogasawara(Bonin)-Islands of Tokyo